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徹底した孤独を楽しむ映画
園子温監督の"愛のむきだし"や"冷たい熱帯魚"など、人間の感情をあらわにした映画を"動"の映画とすると、本作は、言うまでもなく"静の"映画となる。
深夜、暗い部屋で電気をつけずに見ているとどこか懐かしく、モニタの中に引き込まれていくような感覚に陥る。
そう、思春期の頃、夏の深夜、眠れずに目をつぶったままラジオ一人聴きながら考えごとをしていた。遠い未来を夢見て。地球上で自分だけの存在になったような感覚だ。
作中でも何の説明も語られず、会話もほんの数回である。少しのノイズを聴きながら永遠につづくような時間が楽しめる。そうだ、廃墟写真などにノスタルジックを感じる方であれば、この感覚が少しはわかるはずだ。
孤独だが悲壮感はない
徹底した"静"の映画と前述したが、アンドロイドたる設定の所以か、そこに悲壮感はない。心地よい孤独が楽しめる。
物が壊れた音がしようが、人と会話が聞こえてこようが徹底的な"静"を感じられる。
予備知識なく見ると、彼女が何を配達しているのかさえ不明だ。ただ、そんなことはこの心地良さの前ではどうでもよくなってくる。
アクセントとなるノイズ
作中、ノイズになったものを2つ上げる。
虫の死骸
いるはずのないものが存在し、そしてその歪みは少しだけ感覚を狂わせる
缶の音
明らかに作中のリズムと違った異質な音であった。彼女には静寂の中のノイズが大切な思い出になったのだろう。
最後に
廃墟となった街並みは原発事故を想起させる未来の人類への暗示なのか?
いや違う。流れて行く時はこんなにも美しい。ただそれだけと感じたい。
この映画を見た時、TMNのEXPOを思い出した。孤独や静けさ、未来を感じられる良いアルバムだった。
そして私は、思春期のあの時、あの夜感じた"未来"を宝物に生きていくのだろう。
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