黒井戸殺し感想 傍観者とおかしな村人達


4月14日放送

三谷幸喜脚本、原作アガサ・クリスティー アクロイド殺し

もちろん原作は読んでいない。

キャスト・スタッフについて

時代は戦後の昭和。キャストの大泉洋がぴったりだ。と思ったらお医者さんなのね。冒頭からだと物書きだとおもった。ゴシップ大好きな姉さん!?(斉藤由貴)との会話ですぐに三谷幸喜らしさが伺える。まじか。斉藤由貴、奥さんかと思った〜。姉さん、古畑で言うところの西村雅彦の役回りだな。

舞台は映画"ゆれる"のような渓谷の村っぽい。時代を考えると当然のロケハンだ。

兵頭春夫(向井理)はこれまた典型的なドラ息子。きっと作中天罰か下るな。東京から帰ってきたのには理由がありそうだ。 花子役の松岡茉優は顔と服装が時代の雰囲気にぴったり。ベストな人選かと。この時代のドラマになんら違和感がない。従兄弟の春夫と婚約だと。けしからん。不幸になるからやめとけ〜。松岡の表情は訳ありだ。

狭い村らしく住民同士、距離がめっちゃ近いみたいやね。初っ端から、人間関係が絡みあってきた。

春夫と義理の父親、黒井戸(遠藤憲一)に何か訳あり。黒井戸邸での食事でも緊迫した雰囲気が流れる。この屋敷内の人間が全員が全員疑心暗鬼になっているような演出だ。

命は命を持って償うしかない

この言葉の後に事件が始まっていく。 人間の弱さに付け込んだ奴がいる。怨恨なのか、私利私欲なのか。

遺体の取り扱いに少しコメディを入れてくるあたり脚本三谷幸喜を感じる。

刑事役が佐藤二郎、これ完全に笑いとりにきてるだろ。刑事役の会話が軽快だね。重苦しくなりそうな進行が佐藤の存在自体でコメディになる。

まともな一人と笑いをとりにきてる出演者たち

何か、役者全員オーバーアクションで笑いをとりに来ているような演技だ。その中で柴(大泉洋)だけ、真面目なふりというか傍観者として他の役者の演技を楽しんでるかのようで、そのギャップがまた楽しい。それは花子と探偵の勝呂(野村萬斎)の家に伺う時にはっきりと狙っているな。と把握した。柴とおかしな村人達だ。勝呂を全然信頼していない柴の表情も見ものだ。

殺害現場での会話では、さすが三谷幸喜。流れるような会話のリズムで自然と話しを進行して行く。ダチョウ倶楽部のような「私が、いえ私が」のようなリズムを挟んでくるところもさすがだ。凶器に見立てたペンをいつまでも肩に当てているのにも笑えた。そういう小技が三谷幸喜らしい。勝呂と来仙(余貴美子)の会話も楽しみになってきた。

宅内での鍋焼きうどんの食事は黒井戸邸とはうってかわって陽気な雰囲気だ。勝呂と姉さんの相性の良さが伝わってくる。作中勝呂より唯一強烈な個性を放っていたのは姉さんだったと感じる。まずいカレーを食べた時の勝呂の表情が楽しかった。

また姉さんは柴に対して外に漏らしたくない話しはあたしにしたらダメと宝石のような発言を当然かのように言い放つ。よく人間性が描けているな(笑)と感心した。

この辺りまでくると、勝呂の強烈な個性と癖の強い演技(笑いをとりにきてる)を行うキャストの対面での会話が楽しみになってくる。

唯一のまともな村人である柴は勝呂に、自分一人がわかっているふうな感じ、ほんとにイライラするんですけど。と言い放つ。まるでこのドラマをテレビ越しに見てる出演者のような台詞だ。柴だけこの劇中で異質の存在である。作中で柴の書いた手記の感想でも自分のことを控えめに書いてあると勝呂は言う。これはある種の暗示と受け取り、私の中でああ、柴はこの作での傍観者なんだな。と確信した。

葬儀のシーン

結婚するはずの二人の葬儀。遺影が並んでいるカットは 何故こうなってしまったかの事件の動機が気になるカットだ。演出的にも合同葬儀というのは新鮮だった。夫婦で並んだ遺影を見てるとどうしても感傷じみた思いになってしまう。

解決編

解決編も笑いを入れてくる。袴田(藤井隆)の立ち聞きであったり、立ち聞きのプロである袴田に全く気づかなかったと言わせしめたある事実であったり。 また次の会話になる相手へのカットの入れ方が上手かった。次への会話の前に役者の表情を伺うことが出来る。

この流れの中で空気読まずに男女がイチャイチャするのも流石っす。さすが笑いを取りにきてる役者達。そして役者達を華麗に操る脚本。それは、開けた扉を閉めたことは一度もないの台詞にも伺える。

ラストまでの真相の解説の流れは見事だ。1時間ほどもある解決編の会話劇は伏線の回収と共に満足感と次のハラハラに繋がる。人それぞれに秘密がありそれが見事に明かれれていく。

ラストの真相は圧巻。とはいえ途中で怪しいなとは思ってた。薄暗い部屋に陽が当たる表現はお馴染み地獄の黙示録チックだ。

この作品、出演者全員、強い個性のキャラを演出通りに演じきったようだが、私の中でのベスト出演者はやはり佐藤二郎かな(笑) この人の進行ではっきりと笑いどころが掴めた。

アクロイド殺し (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

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オリエント急行殺人事件 DVD-BOX

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