19歳の夏と俺

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  • Yoshiko Ichikawa
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今週のお題「海」

取り留めの無い思い出。


19歳の頃、はじめて携帯電話を買った。といっても田舎で電波状態の悪かったPHSから携帯電話に変更しただけだった。


友達の少なかった僕の携帯電話の電話帳の中には数人の友人と片思いしている女性の電話番号が登録されていた。


その女性とは普段は住む場所が物理的に遠く離れていて、僕が電話をかけると話し相手になってくれるような人だった。しばらくはお喋りできる関係になるのだけど、その女性に恋人が出来ると疎遠になるような間柄だった。

恋多い女性だったんじゃないかな笑


その携帯電話を手にした19歳の夏、実家に帰省していた僕は、その女性に会えるんじゃないかな。といつも胸に期待しつつ過ごしていた。

まるで山崎まさよしのOne more time,One more chanceのようにその女性にばったり会えるような夢を見ていた笑


で、たまたま夏の夜、友人と2人でドライブしていた時にその女性に電話してみたんだ。軽いのりで「遊びに行かない?」のような感じだった。

その時の返事は意外にも誘ったことや僕が携帯電話を持ったことに対してすごく喜んでくれたように感じて、僕自身とても幸せだったことを覚えている。


肩幅の広い彼女は黒いキャミソールを着てきて、とても刺激的だった笑


僕の友人と彼女と彼女の友人とで向かった先は夜の太平洋だった。

お昼はサーファー達で賑わうその海も夜は静かだった。大きな太平洋は僕達の4人占めだった。

その真っ黒な中に月明かりが反射する海を見ながら僕達は何かについて語りあった。

もう今では何についてだかも思い出せないけど、その時間は19歳という年齢も合わさって僕の中ですごく幸せな時間だったように記憶されている。

他愛もない会話と会話が途切れた時に聞こえてくる波の音がとても心地良かった。


今でも夏になるとあの海のことを思い出すことがある。もうすっかり疎遠になったけど、彼女はあの月明かりが照らした黒い海を思い出すことはあるのかな。ほんの少しだけでもたまには思い出してくれてたらいいのにな。

と海について思い出したセンチな夜なのであった。